理事長挨拶

 このたび、引き続き第23期・第24期の理事長を拝命することとなりました。これまで本学会を支え続けてこられた会員の皆様に深く敬意を表しますとともに、伝統ある本学会の75周年、80周年に向けて一緒に進んでまいりたいと思います。
 日本栄養改善学会は、栄養学をベースに「すべての人の幸福と健康」に寄与することを使命として、疾病予防、健康増進、生活習慣改善から、地域づくり、食環境整備、フードシステム、人材育成、さらには国際的な栄養課題に至るまで、社会のあらゆる領域と関わり合いながら発展してきました。特に現代社会では、文化的背景の多様性、健康格差、栄養不良の二重負荷、食品安全、環境と栄養の統合的課題など、複雑かつ多層の課題が顕在化しています。これらの課題に対し、栄養学の科学的根拠を基盤としながら実践現場と結びつくことで、より強い社会的インパクトをもつ学問領域へ進化しています。
 本学会は、病院、地域、公衆栄養、学校、福祉、企業、研究機関など、国内の栄養学関連領域が一つに集う稀有な学会です。あらゆる領域の「実践の現場」と「研究の場」が連携し、現場の課題を研究へ昇華させ、成果を再び実践へ還元できる学術基盤を持つことは、他にありません。この独自性は、実践栄養学を未来へとつなぐ本学会の最も大きな強みです。
 本学会は長期目標として「実践栄養学の学術としての確立」を掲げ、栄養・食の管理の実践現場と大学・研究機関が協働し、研究の蓄積と成果発信を強化するという中期目標のもとに歩んでまいりました。これらを達成するために、先期の目標である「研究と実践活動領域の拡大」を継続し、第23期・第24期では、若手会員の活性化、支部会連携の強化、他学会・団体との連携を活動目標として事業を進めます。具体的には以下の重点課題に取り組みます。

◎ 会員数の増加と多様な実践領域の参加促進: 栄養教諭、福祉領域、地域包括ケア、在宅栄養、企業・フリーランスなど、多様な場で活躍する専門職が研究・実践を発表し交流する場を広げます。若手の研究者・養成校教員の学会参画も積極的に進め、実践から研究への展開を支援します。
◎ 若手会員の活性化: 若手学会発表賞、若手会員・学生会員の集いに加え、実践研究の着想となる若手向け動画制作を進めます。若い世代が学会を「自身の学術的拠点」として感じられる環境を目指します。
◎ 支部会連携の強化: 実践栄養学研究セミナーなど、各地域の実践を共有し、研究へつなげる流れを強化するために、支部会間交流広場をはじめとする連携を強化します。
◎ 他学会・団体との協働: 日本栄養学学術連合、全国公衆衛生関連学協会連絡協議会、健康な食事・食環境コンソーシアム、健康日本21推進全国連絡協議会、和食文化国民会議など、他の学会・団体との連携を深め、学術総会での共同シンポジウム開催など、社会実装へ向けた活動を一層推進します。
◎ デジタル基盤整備・学会運営改革: 2025年8月より事務局業務委託を開始し、2025年12月に新ホームページを公開、2026年1月には新会員管理システムが稼働します。これらの改革を通じて、会員サービスの向上を目指します。また、第24期にはオンラインジャーナルへの移行の検討を再開し、会員アンケートなどをもとに将来構想を具体化していく予定です。
 栄養学が社会のニーズに応え、すべての人々の幸福と健康に貢献するために、会員の皆様とともに、学術活動・研究支援・社会発信に力強く取り組んでまいりたいと存じます。
引き続き、皆様のご理解とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

2025年12月18日
理事長 塚原 丘美